校長日誌

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2022年02年19日 | 校長日誌

卒業生 西川美和監督の映画『すばらしき世界』が、第76回毎日映画コンクールにて日本映画優秀賞に選ばれました。また、男優助演賞、撮影賞、音楽賞の受賞と合わせ、最多4冠とのことです。おめでとうございます。

西川監督の色紙や直筆の手紙などは、図書館内に常時掲示されていました。著書『ゆれる』『ディアドクター』『永い言い訳』(以上、映画化作品)、『きのうの神さま』『映画にまつわるXについて』なども所蔵されています。

『すばらしき世界』は、すでにシカゴ国際映画賞、シアトル国際映画賞でも受賞されています。今、広島ロケで一躍有名になった『ドライブ・マイ・カー』が大きな話題となっていますね。広島つながりでうれしいお知らせです。

日本アカデミー賞においても、優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀主演男優賞、優秀助演男優賞、優秀撮影賞、優秀照明賞を受賞されています。最優秀賞の発表も楽しみです。

かつて、学園祭高Ⅲ参加単位の企画として、多くの卒業生にインタビューしたときの記事が残っていました。西川美和さんへのQ&A一部をご紹介します。映画上映に至るまでのご苦労ややりがいが伝わってきます。

Q 日々のお仕事のご様子、やりがいを教えてください!
A 脚本を書くのに非常に時間がかかりますので、殆どは机にかじりついています。しかし集中力が持続するのは3分くらいで、色々気を散らしながらも、はたと我に返って、また、筆を執る。また気が散る。その繰り返し。煩悩との戦いです。…

やりがいは、そうやって長いこと費やして書いた脚本を、美しい技術を持ったスタッフたちの力を借りて、かたちにして頂く時に感じるように思います。映画の現場スタッフの多くは、真摯で、辛抱強く、頭が柔らかく、人間的な魅力にもあふれているように私は感じます。尊敬できる仕事仲間に囲まれて過ごせるというのは、本当に幸福なことだと思います。

映画監督の仕事というのは、「撮影をしている」というイメージが一般的なのだと思いますが、撮影に入る前に、脚本執筆作業をのぞいても、大変多岐に渡るプロセスがあります。…様々な準備をする時間があり、実質的には撮影よりもこちらの方が長い期間を要します。撮影を終えると、編集室にこもって編集をし、音楽家たちと音楽を作り、最近ではCGクリエイターが視覚効果を作る作業に立ち会い、効果音をチェックし、という「仕上げ作業」がまた数ヶ月にも及びます。

以上の、準備、撮影、仕上げ、と言われる行程が実質の「映画作り」となりますが、映画監督や主演俳優は、完成後は「映画を売る」という行程に参加します。宣伝部や配給会社と組み、全国を数ヶ月に渡ってPR行脚し、作品規模によっては海を渡ることもあるでしょうし、何百という媒体のインタビューに答えます。

Q 在校生へのメッセージをお願いします!

A 卒業して20年経ったから言えますが、十代で出来た友人関係は他にかえがたいものがあります。どんなに距離が離れても、連絡を取り合わなくても、掛け値なしでつき合える、生涯の友達と出会うことが出来ますように。

8年前になるでしょうか。その節はありがとうございました。個人的には『その日東京駅五時二十五分発』(西川美和 著)という小説をいつか映画化してほしいなと願っています。どの作品や著書も人間の内面を深くみつめさせられますが、この本のあとがき(2011年春の執筆)を読むとさらに心が揺さぶられます。

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今回、原作『身分帳』(佐木隆三著)から映画化を構想、脚本作成、監督を務めあげた西川美和さんの新たな挑戦。これからの益々のご活躍をお祈りしています。

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感謝と祈りのうちに

 

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