少し長い前置きをさせてください。
遺伝子工学で世界をリードする研究者の一人,村上和雄さんの『スイッチ・オンの生き方』によると,人間の全遺伝情報の差は,ノーベル賞をもらう天才と普通の人で,わずか0.5パーセント。つまり,遺伝子(ゲノム)のレベルで比べてみれば,人間は99.5パーセント同じなわけです。ほとんど同じなのに差があるのは,人によって「眠れる遺伝子」を呼び起こすことが上手かったり下手だったりするから,だそうです。
では,よい遺伝子を呼び起こすにはどうすれば良いのでしょう。
いくつかの方法の中に,「人との出会い,機会との遭遇を大切にする」というものがあります。さらに「一流に交わる」ことによって刺激を受け,眠っていた遺伝子がオンになることもあるようです。

さて,ここからが本題です。
6月19日(火)に,ノンフィクション作家としてご活躍中の石井光太先生による,全校生徒を対象とした講演会がありました。石井先生は,アジアや中東でのストリートチルドレンや物乞いをして生きる人々,あるいは日本での幼児虐待や少年事件に真摯に向き合い,取材した内容を本にされていらっしゃいます。過酷な状況,厳しい現実の中で生きる人々に寄り添い,より良い社会を作りたいと執筆活動をされている石井先生の講演会は,まさに生徒たちの「眠れる遺伝子」をオンにする貴重な機会。「広島を復興させた人びと」という演題で,貴重なお話をうかがうことができました。また,講演会後には,もっとお話をうかがいたい,質問をしたいと願う生徒たちとの座談会も開かれました。

〝遺伝子をオン″にした生徒の感想をご紹介します。

「先生はユーモアのある,とても素適な方でした。ご講演の内容は一つ一つがとても深く,私は特に東日本大震災のために54日しか生きることができなかった赤ちゃんのお話が心に残っています。先生のお言葉全てに仕事への熱意,取材された方々への敬意がギュッと詰まっているように感じられました。とても貴重な体験ができたと思います。また,講演会後の座談会でも,興味深いお話をたくさん聞かせてくださった先生には,感謝の言葉しかありません。お聞きすることができた内容はしっかりとメモを取ったので,今後の役に立てたいと思います。」

「先生の講演はとても面白く,心に響いてきました。普段はあまり考えることのない世界の紛争や災害に巻き込まれている人々について,改めて考えることができました。私は先生のおっしゃった『人間の強さ』についての話がすごく心に残っています。たとえ家がなくなっても,家族を失っても,また立ちあがって生きていくというお話に,人間の強さと希望を感じました。」

石井光太先生,本当にありがとうございました。